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【国・ミ】ネタバレ『風ケ丘五十円玉祭りの謎』(②)青崎有吾

  • w-pegana
  • 2015年12月1日
  • 読了時間: 3分

※本ページはネタバレありです!

①からの続きです。

「風ケ丘五十円玉祭りの謎」

表題作です。

タイトルから、若竹七海さんが体験した不思議な謎と、そこから生まれた諸作品を連想させます。

最近でも同テーマで、小森収さんの「土曜日のこども」が生まれています。

途中、提出されるスリ対策というダミーの解決も面白いですが、裏染がそれを覆して導き出す真相もまたユニーク。

ただし、お客は所持している小銭の総数に対して、一定の割合で落とし物をするわけではないので、犯人に利益が出るのかは疑問です。

まあ、「儲けが出たら来年もやろうぜ」くらいで考えているのかもしれません。

「針宮理恵子のサードインパクト」

個人的ベストです。

登場人物たちに人間味があって好きでした。

(真相には「学校でそんなことするかな」と思いつつも)

詳しい理由は次の「天使たちの残暑見舞い」のあとに書こうと思います。

「天使たちの残暑見舞い」

私はたまたま本作を読む前に、映画の『悪の教典』(伏字)を観ていたので、救助袋(窓からベローンと伸びるやつ)を使ったのかなと思いつつ、でもそうすると後始末が、と悩みつつ…。

この真相は盲点と云うか、私は体験したこともないし、このような訓練をすることを聞いたこともなかったので、びっくりと云うか「へえー」と感心してしまいました。

さて、宍戸が急に歩くのが遅くなったりという都合の良さは心情面が描かれているので納得できますが、防災訓練に参加している人たちはちょっとテキパキしすぎな気も。

先ほど後回しにしていた、なぜ「針宮理恵子のサードインパクト」がベストだったかというと、

ネタバレ(①)の最初と最後にも少し書いたのですが、本書を読んでいてすごく感じたのは、裏染や柚乃周辺から離れたところにいる人物たちにいまいち人間らしさが感じられず、ただ謎を作り出す機械のようになってしまっていることでした。

具体的に云えば、

「もう一色選べる丼」では犯人である北里とその彼女

「風ケ丘五十円玉祭りの謎」では祭りに来た客

「天使たちの残暑見舞い」では防災訓練に参加している生徒や教師、そして消防職員です。

意外性を出すために、ほんの少ししか登場していない人、一見関係なさそうに思えた人が、実は重要な役割を担っているというのはミステリではよくあることだと思いますが、だからと云って、彼らもやはり人間です。

急に弁当を作ってくるだろうか。

もっと適した場所があるのに、意味もなく戻ってくるだろうか。

一定の割合で落とし物するだろうか。

分単位でテキパキと動くだろうか。

その点、「針宮理恵子のサードインパクト」はあの謎を直接構成しているのは早乙女と山吹の二人のみです。

ごく少数であり、彼らをしっかりと描いているので、話全体にまとまりがあり、大変生き生きしています。

また、さらに針宮理恵子という第三者に視点を据え置くことで、より不透明性が増しているのも上手いです。

だから、個人的にベストでした。

「その花瓶にご注意を」

早くから被疑者は分かり、後半は一対一の攻防となる展開が個人的に好きでした。

鏡華の導き出す答に、矢烏がポイントシールのために持っておいた別の蓋を取り出すあたり、抜きつ抜かれつとでも云うか、ジリジリと競り合う緊張感が出ています。

しかし、肝心の決め手が凡ミスとでも云うべき見落としなのは少し残念。

いっときは上手かもと思わせた相手にしては…。

とは云え、花瓶に細工をしたあとペットボトルの蓋を置き忘れるような犯人ですから、らしいと云えばらしいのかも。

「世界一居心地の悪いサウナ」

裏染と鏡華の推理力は父親譲りなんですねえ。

と、初めての記事だったので、完全にペース配分を間違えました。

次からはもう少しあっさりしたいと思います。

 
 
 

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