【国・ミ】『風ケ丘五十円玉祭りの謎』青崎有吾
- w-pegana
- 2015年12月1日
- 読了時間: 4分
『風ケ丘五十円玉祭りの謎』(東京創元社)の紹介ページです。
平成のエラリー・クイーン、青崎有吾の第3作目にして、初の短編集。
収録作品は、
「もう一色選べる丼」
「風ケ丘五十円玉祭りの謎」
「針宮理恵子のサードインパクト」
「天使たちの残暑見舞い」
「その花瓶にご注意を」
おまけで、
「世界一居心地の悪いサウナ」
の計6作品。
いずれも、殺人事件の起こらない日常の謎系。
前4作を裏染天馬が、「その花瓶にご注意を」のみ天馬の妹・裏染鏡華が探偵役を務めます。
「もう一色選べる丼」
ある日、主人公・袴田柚乃たちは学食裏に、食器が放置されている事件(?)に出会う。
学食で働くおばさんがそれを見つけてお怒りの様子。
というのも、柚乃たちの通う風ケ丘高校では昼休み内の食器返却をルールに、校内であれば学食から食事を持ち出してよかった。
だが、約束を守らない輩のために、今度食器が放置されているようなことがあれば「持ち出し禁止」の取り決めがなされていたのだ。
しかし、おかしなことに、放置されていた食器には、ソースカツだけが半分残されていた。
好きな丼ものの種類を2種類選べる、学食で人気の「二色丼」。
犯人はどうやら、「二色丼」で自らソースカツを注文しておきながら、メインのおかずを残してどこかへと行ってしまったらしい。
このおかしな事件に裏染天馬が立ち上がる(食券20枚と引き換えに)。
「風ケ丘五十円玉祭りの謎」
夏祭りへとやってきた柚乃が露店でたこ焼きを買うと、なぜか200円のお釣りが全部50円玉で返ってきた。
同じく祭りへとやってきていた裏染と会うのだが、どうやら彼もこの不思議な光景に遭遇したと云う。
裏染の妹・鏡華や新聞部部長・向坂香織も手伝い、調査を進めると、事前に誰かが「お釣りになるべく50円玉を使ってください」と指示を出していたらしい。
一体、誰が、何のために。
「針宮理恵子のサードインパクト」
何かと悪目立ちしがちな針宮理恵子には、幾度かの小さな衝撃が。
最初は1年生のときの秋のこと(『体育館の殺人』とリンクしています)。
2つ目は今年の春のこと。
その2つ目の衝撃をきっかけに、彼女は吹奏楽部に所属する早乙女という男子と付き合い始めた。
ところが、暑さ苦しい夏になったころ、早乙女が同じパートの人たちからいじめられているような現場を目撃する。
彼は王様ゲームで負けて買い出しに行ったのだが、帰ってくると練習で使っている空き教室の鍵が閉まっている。
だが、中からは練習する音が。
何度も呼ぶと、ようやっとドアが開かれるが、中にいた部員に悪びれる様子はない。
早乙女曰く、今度で2度目だと云う。
果たして、夏の湿気の如く陰気ないじめがそこにあるのか。
針宮は裏染に真実を突き止めるよう依頼する。
「天使たちの残暑見舞い」
ある日、柚乃と彼女の友人・早苗は抱きあっていた(!)
裏染のクラスメイトで演劇部部長・梶原が見つけたOB・宍戸のノート。
そこに書かかれていたのは、宍戸が実際に体験した不思議な出来事だった。
6年前の9月1日。
演劇部の部室で寝入ってしまった宍戸は、教室に忘れもののを取りに行く。
夏休み明けで、学校は午前中の始業式だけなので、校舎は静まり返っている。
教室へ着くと、彼は神秘的な場面に遭遇する。
教室で、女子生徒2人が抱き合っていたのだ。
慌てた宍戸は引き返し、廊下で呆けていたのだが、好奇心からか再度教室へと行ってみる。
ところが、さっきまでいた女子生徒2人は教室から消えていた。
廊下はずっと宍戸が見ていたのに。
密室から消えた彼女たちはどこへ行ったのだろうか。
そして、彼女たちはなぜ抱き合っていたのか。
6年の時を経て裏染天馬が真実を見抜く。
「その花瓶にご注意を」
名門・緋天学園中等部。
そこに通う仙堂姫毬は、クラスメイトの裏染鏡華の乱れた風紀を注意していた。
放課後の教室でヒートアップする2人の元に、鏡華の可愛がっている(!)後輩がやってきた。
彼女は教室前の廊下に置いてある花瓶が割れていると告げる。
花瓶はたしかにバラバラになるほど割れていた。
しかし、教室にいた姫毬も鏡華も、その割れる音を聞いていない。
早速、聞き込みを始め、ある怪しい人物へと辿り着く。
だが、狡猾な被疑者に今一歩及ばない。
この困った局面で、とあることをきっかけに、鏡華が本気(怒涛)の論理展開を見せる。
「世界一居心地の悪いサウナ」
とあるサウナに少年と男が二人…。
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