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【国・ミ】「葦」登史草兵

  • w-pegana
  • 2015年12月13日
  • 読了時間: 2分

「葦」(ハルキ文庫他・鮎川哲也編『怪奇探偵小説集 2』所収)の紹介ページです。

幻の作家、登史草兵については「蝉」のページで詳しく(というか長々と)書いたので、ここでは省略します。

割合さっぱりとした作品なので、感想文もさっぱりめに。

「蝉」紹介ページでも書きましたが、この人は冒頭で読者を引きつけるのがとても上手い作家で、本作にしても1ページ目から読まされます。

短編はページ数が少ない分、いかに早く読者を作品世界へと引きずり込むかが大事になってきますが、その点で云えば登史草兵という作家はアマチュアらしからぬ技量を持っていたと云えるでしょう。

「蝉」では熱っぽい夏や陰鬱な邸が閉塞感を醸し出していましたが、本作では打って変わって北海道あたりが舞台となり(P.242「[…]最果ての北の国に着いたのは[…]」との記述から)、季節も秋から冬にかけての話となり(P244「[…]すでに寒さを感じる潮の香を[…]」との記述から)、一見解放感が窺えます。

しかし、走る列車の中、車窓いっぱいに防波壁が広がる光景から始まる物語は、「蝉」とはまた違う息苦しさを感じます。

ストーリーは、

北の大地を走る列車の中、途中の信号所から乗ってきた美しい女が、人の姿がまばらなのにもかかわらず、なぜか「私」の正面の席に座ってきて、そちらを向けば目を逸らすものの、どうも「私」の顔をちらちらと見ているらしい。

列車は終点へと近づき、内陸へと大きくカーブをすると、車窓いっぱいを占めていた防波壁の姿も消え、壮大な海が見えてくる。

しかし、それも四、五分ほど走ると、ふいに湖水にひろがる葦の原が目の前に現れた。

その中に石塔や墓石のようなものがあるのを見て、「私」が史跡か何かかと、思わず疑問を呟くと、目の前の女が、

「いいえ、ここは墓場ですわ」

と、云った。

やや中途半端ですが、こんな感じ。

あらすじを書くのが難しい。

というのも、冒頭でも述べたように、本作はかなりさっぱりとした作品で、しかも今となっては似たような話がごまんとありそうな展開なので、あまり詳しく書けないのです。

出来としては、やはり「蝉」には及ばずという感じでしょうか。

 
 
 

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